大学二年のとき、フランス語の授業でバンジャマン・コンスタンの『アドルフ』という小説を読みました。フランスの心理小説の一つで、鋭い人間観察で知られる作品です。
大学入学後の虚無的な私の思いに、かなりの影響を与えた書物でした。 先日、フランス語の講義を非常勤でやったときに、学生の質問からフッと口をついて出るほどに憶えていた一節(ただし、そのとき正確に思い出したわけではなかったんだけど)を、書き出しておくことにしました。フランス語原文が、今、見つからないので、邦訳から。 「・・・私は人生のはかなさを思い起こさせるような詩を好んで読んだ。私にはどんな目的も、なんらの努力をはらう価値はないように思われた。しかし、年をかさねるにつれて、この印象が薄れてきたのは、まずふしぎというべきである。おそらく、希望というものの中にはなにかあいまいなものがあって、人間の一生からその希望がしりぞいていくにつれて、人生はいっそうきびしい、いっそう現実的な性質をおびてくるものだからであろうか。雲が消えると岩山の頂が地平線にいよいよくっきりと描かれるのとおなじように、あらゆる幻想が消えるとそれだけ人生はいっそう現実的に見えてくるものだからであろうか。」 (竹村 猛訳 『アドルフ 赤い手帖 セシル』 白水社 1987年 pp.16-17)
by fiesole
| 2007-06-24 22:55
| 哲学
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